眼科医が教える、子どもの目の成長&異常早期発見のポイント

目次
子どもの目の成長・発達について

子どもの目の機能は、3歳6ヶ月ごろまでに視力1.0程度まで成長し、7歳ごろまでには完成するとされています。小学校に入学する頃には、日常生活に支障がないレベルで視力は安定するのが正常です。
目の機能は成長に合わせて高まるものではありません。むしろ生活習慣などで悪化する傾向が見られます。そのため視力を維持するためには幼い頃から目に良い生活習慣を心がける必要があります。視力は遺伝の影響も受けますので、親が近視だとお子さんも近視になる可能性が高く注意が必要です。
体の成長に合わせて眼球も変化します。眼球の奥行きが長くなることは近視に繋がるので、身長が伸びている、つまり成長期の間は近視が進行すると言えます。
最近では幼少期からスマートフォンやタブレットを利用することで、近視が進んでしまうお子さんが少なくありません。さらにスマホは本よりも近い距離で見るため、より視力への悪影響があると言えます。
現代の子どもの目について
小中高生の視力は悪化が進んでいる

近年、小中高生の視力は悪化が進んでおり、特に勉強が本格化する小学校中学年以降で近視が悪化する傾向が見られます。
裸眼で視力が出ていないと、黒板が見えにくい、スポーツに支障が出るなど、学力・体の成長・コミュニケーションなどに悪影響が出ますので、眼鏡での矯正が必要です。小学生まではコンタクトレンズの使用は推奨できません。
最近では眼鏡以外にも、近視を改善する目薬を使ったり、寝ている間にコンタクトレンズをはめることで眼球を調整し、日中は視力が向上するといった治療法もあります。しかしまだ研究段階で効果が明確ではないものも多く、根本的な治療法は見つかっていません。
近視の進行を防ぐために重要なことは目に悪くなる習慣を避けることです。
具体的には、
・スマホやタブレットを長時間使わない
・近い距離で本や画面を見ない
・暗いところで本を読まない
などが挙げられます。
目に良い習慣として、その他に外で遊ぶことを進めています。太陽光に含まれる紫色の光が目に良いためです。紫外線は白内障の原因になるものの、お子さんには大きな悪影響はありません。
子どもの目の異常に早く気付くには?

目の機能の発達状況を知るために重要なのが3歳児検診です。幼少期は子ども自身が見え方の問題を自覚し伝えることは難しいので、ご両親の観察が必要になります。たとえばお子さんにこのような様子が見られたら、眼科の受診を検討してみてください。
斜視の兆候
・寄り目に見える
・どちらかの目が外側にズレて見える
・片目をつむる
・眩しがる
斜視は外見に出やすいため観察で発見しやすいと言えます。片目のみ弱視で斜視のように見えることもあるので、両目の動きに違和感があれば要注意です。
弱視・遠視・乱視の兆候
・見えづらそうにしている
・笑顔を向けても反応が薄い
3歳頃までに遠視・乱視による視力低下が見られたら眼鏡で矯正します。視神経は脳につながっているので、はっきり像が見えない場合、脳にもぼんやりした像が伝わることになります。この状態が続くと視力が正常に発達せず、弱視と呼ばれる「眼鏡をかけても視力が十分ではない」状態になってしまいます。成長してからの回復は難しいため、早期発見・早期治療が不可欠です。このような矯正が必要なお子さんは少数ですが、不安がある場合は医師へ相談してください。
近視の場合、近くのものは見えるので眼鏡がなくても脳へ鮮明な像が伝わるため、弱視になるリスクは低くなります。ただ、成長するにつれて近視が進む可能性は高いため、目に良い生活を心がけるべきです。また、見えづらさは勉強や生活に支障が出ますので、眼鏡などで矯正することも必要です。
就学前のお子さんの場合、眼鏡を嫌がることもあります。恥ずかしがることもありますが、目の健康のために医師の指導に従っていただきたいです。悪化を遅らせることはできますが、目の機能を回復するのは困難です。眼鏡をかけるよう、家庭でも言い聞かせるようにしてください。
また、視力に異常があるように感じても、眼科で検査をすると問題がないケースもあります。専門の機械を使うと詳しい状態がわかるので、違和感があるようなら早めに眼科を受診してください。
同時に様子の観察だけではトラブルを見逃してしまうことがあるため、定期的な検診が重要です。特に早期発見・治療のために3歳児検診の役割は大きいと言えます。最近では検診をおこなう幼稚園もあるようですが、小学校に上る前に機会がなければ眼科での検診をおすすめします。
異常が見つかったら医師の適切な指導を受けることが大切です。小学校に上がると毎年健康診断で視力検査がおこなわれますが、学校での検診では問題を見落としてしまうケースもあります。急速に目の機能が悪化することもあるので、定期検診を待たず各家庭の判断で眼科を受診してください。
あれ?と思ったらすぐ視力検査・測定を

子どもが幼い時は、見え方についてうまく意思表示できないことも多いので、家庭での観察や検査は重要です。ただ重度の異常以外は気づきにくいケースも多いため、専門家による検診が重要になります。
3歳児検診や学校の検診で視力異常を発見・指摘された場合、必ず眼科を受診するようにしてください。他の機会でも不安を感じたら気軽に医療機関を訪ねることをおすすめします。適切な治療を受けることで、視力の悪化を防げる可能性が高くなります。特に遠視・乱視が強い場合、眼鏡を使うことで弱視を防ぐことが可能です。
早期発見・早期治療によりお子さんの目の健康を守りましょう。
執筆医師:渋谷裕子 しぶや眼科クリニック院長
横浜市立大学医学部卒業
卒後神奈川県立こども医療センター勤務などを経てH14年にしぶや眼科クリニック開業。趣味はテニス
https://www.shibuya-ganka.com/