【眼科医インタビュー】増加する子どもの視力低下。原因や対策は?

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【眼科医インタビュー】増加する子どもの視力低下。原因や対策は?
近年、子どもの視力低下が増えており、問題視されています。特に小学生の視力低下の割合が増え、スマホやタブレットの使用が原因なのではと言われることも。今回は、だんのうえ眼科 二子玉川院の院長である大島由莉先生に、子どもの視力低下の原因、近視を進行させないための予防策、理想的な視力チェックの頻度などを教えていただきました。

だんのうえ眼科 二子玉川院 院長 大島由莉先生

専門分野である白内障や角膜はもちろんのこと、コンタクトレンズの使用に伴うトラブルなど、「街の眼科医」として目に関するお悩みにはどのようなことでも親身に対応。また、アンチエイジングの分野にも詳しい。

子どもの視力低下が増えている?

気になる子どもの視力。ここでは、実際に子どもの視力低下が増えているのかをデータをまじえて紹介します。また、大島先生にも子どもの視力低下が増えているのか、学習やスポーツへの影響があるのかを伺いました。

子どもの視力は低下傾向に

●平成27年~令和2年 裸眼視力1.0未満の推移
※文部科学省「令和2年度学校保健統計」より作成

平成29年 平成30年 令和1年 令和2年
幼稚園 24.48% 26.68% 26.06% 27.90%
小学校 32.46% 34.10% 34.57% 37.52%
中学校 56.33% 56.04% 57.47% 58.29%
高等学校 62.30% 67.23% 67.64% 63.17%

子どもの視力は近年、低下傾向にあります。文部科学省「令和2年度学校保健統計」によると、平成29年から令和2年にかけて、子どもの裸眼視力1.0未満の割合が増加傾向にあることがわかります。令和2年度は、幼稚園では27.90%、小学校では37.52%、中学校では58.29%、高等学校では63.17%という結果に。特に、小学校・中学校では過去最多の割合となっています。

視力低下の低年齢化

――近視の子どもは実際増えていますか?

「近視のお子さんの受診は、院内でも増えている印象です。一概には言えませんが、6歳くらいと小学校に入ってからのお子さんが多いですね。基本的には中学生から高校生の視力低下が多いのですが、昔に比べると小学校低学年のお子さんが増えています。小学校に入る前から検査をしておくのがおすすめです」

――どれくらいの視力からメガネをかけるのが良いでしょうか?

「お子さんの生活面での不便さなどで前後しますが、視力が0.7以下また学校の視力検査でB以下の場合は、早めに眼科への受診また必要あればメガネをかけた方が良いですね。小さなお子さんだと、本人も視力低下に気づいていないケースがあります。見えづらくてもなんとなく見えていれば、そのまま放置してしまうことがあるので注意が必要です」

学習やスポーツにも影響

――視力低下は学習やスポーツに影響するでしょうか?

「実際に黒板が見えない、ボールが見えないで受診されるお子さんはいますね。学校で黒板の文字が見えない場合、正しい情報を読み取るのに時間がかかります。スポーツではボールがよく見えない、距離感が掴みづらい場合もあるので不便が生じることも。目を細めて無理に見ると近視を進めてしまうこともあるので、メガネをかけて“見えやすい状態”にすることが大切ですね」

「ちなみにスポーツで言えば、紫外線が目に与える影響も無視できません。2~3時間の屋外活動(日陰でも可)をすることによって近視になるリスクが低くなる報告があります。ただ過剰な直射日光は網膜や黄斑に影響を及ぼしたり、白内障の原因になる場合があります。長時間外にいるようなスポーツをするお子さんなら、紫外線カットのメガネをかけるのも良いと思います」

視力低下の原因はゲームやスマホ?

子どもの視力低下の原因に、ゲームやスマホの影響はあるのでしょうか?また、病気を疑う必要はあるのでしょうか。大島先生に子どもの視力低下の原因を伺いました。

スマホやタブレット、リモート授業などの環境要因

――子どもの近視の原因はなんでしょう?

「遺伝性の近視の場合もありますが、お子さんがゲームやスマホ、タブレットなどを見る機会が増えているため、それが近視の原因になっているかもしれません。最近だとリモート授業などもあり、画面を見る時間が長いという話も聞きますね。また、暗い中で本を読むなどが近視の原因になっていることも。本を読む際は、適切な距離や光が必要なので、少なからず影響はあるでしょう」

病気が原因のことも

――病気が視力低下の原因になることもありますか?

「子どもの視力低下の大部分は、近視、遠視、乱視による屈折異常です。その他の原因に弱視、斜視、先天性の白内障、緑内障、ぶどう膜炎、網膜の疾患、悪性のものなど病気も考えられます」

――病気による視力低下はどうすれば気づけますか?

「病気の場合、それに気づくきっかけはそれぞれ異なります。例えば、先天性の白内障なら、生まれつき症状があるので、視力検査をする前から症状に気付きます。また悪性のものの場合は、突然見つかったりするので、それぞれですね。

まずは検査を行って、視力低下の原因を調べることが大切。子どもの屈折異常は、その程度によって眼鏡をかける治療が必要になります」

成長期の急激な視力低下

成長期の子どもによく見られる、急激な視力低下。視力チェックはどれくらいの頻度で行うのが良いのでしょうか。

半年で急激に視力が下がることも

――成長期の子どもは視力低下しやすいですか?

「小学生は急激な視力低下が多いです。半年以内に視力が一気に低下してしまうこともあります。それもただ単純に近視が進んだのか、新たに病気が合併したことが原因なのかは、診てみないとはっきりしないので、まずは検査が必要。そこで病気要因ではなく、近視が進んだとわかれば、メガネの度数を調整していくことになります」

理想的な視力チェックの頻度

――学校の視力検査は年に1回ですが、定期的に視力はチェックすべきですか?

「お子さんにもよりますが、両親ともに近視が強いなど、遺伝性の近視が心配なら2~3ヵ月に1回視力チェックをしても良いかもしれません。少なくとも夏休み、冬休みの2回、春休みも入れて3回くらいチェックできるのが理想ですね。

また4~5月あたりは、学校の視力検査からの受診が多いです。
もしお子さんの様子を見て、視力のことが少しでも気になるなら、学校の視力検査を待たずに受診されることをおすすめします」

子どもの視力低下を進行させないために

子どもの視力低下については、保護者が気づいてフォローしてあげられるのが理想です。ここでは視力低下の予防策、子どもの様子のチェック方法などを紹介します。

今日からできる予防策

――具体的にどんなことをしてあげるのが良いでしょうか?

「目を休ませたり、光の調整などで生活を整えてあげたりするのが良いですね。おすすめなのは、1時間画面を見たら5~10分休憩をとること。近くを見る機会が多いので、合間に遠くを見せることが大切です。

窓の外の景色から遠くの電柱を見るように伝える、お庭から2~3軒先の家を見るように伝えるなど、お子さんが“遠くをみること”がわかるように指示してあげると良いかもしれません。近いところ、遠いところを交互に見て、視点をずらす習慣をつけるのが理想です。

また本を読む時は30cm以上離し、正しい姿勢、適切な光で見るように。パソコンやスマホは目の発育に影響のあるものなので、利用が過度にならないようにしましょう」

――疲れ目対策などはありますか?

「目を酷使するのは近視の要因になりえます。ホットタオルやアイマスクで目を温めると、血行が良くるので眼精疲労に効果的です。
日の光を浴びる、寝る時は電気を消すなどの習慣も、視力だけでなく健康面で役立つことが多いので意識しても良いかもしれません」

――予防策として眼科を受診した方が良いでしょうか?

「定期的に受診できれば良いのですが、実際眼科に行くのはハードルが高いという親御さんも多いです。その点、メガネ屋さんだとハードルが低いのでは。実際、メガネ屋さんからの紹介で眼科を受診される患者さんは多くいらっしゃいます。フレーム調整などでメガネ屋さんに足を運んだ際に視力測定をするなど、上手に活用できると良いと思います。そこから必要であれば、眼科受診につなげると良いのではないでしょうか」

子どものこんな様子に気づいたらすぐに視力のチェックを

――視力低下に関して、子どもの様子で注意すべき点はありますか?

「お子さんは自分の視力低下に自分では気づけません。テレビにいつもより近づくようになった、目を細めるようになったなど、いつもと違うお子さんの様子がないかを観察すると良いと思います。

小学生なら、簡単な“視力検査シート”をご自宅で利用するのもおすすめです。シートを壁に貼って、簡単に視力をチェックできます。小さなお子さん用に、動物の絵が描かれたものもあります」

――最後に大島先生から読者にメッセージをお願いします。

「お子さんの近視は昔から問題ではありましたが、視力低下の若年化が増えている印象です。もしお子さんが見づらいのではと思うことがあれば、積極的に検査されることをおすすめします」

メガネ店の視力チェックを上手に活用するのもおすすめ

メガネのアイガンでは、いつでも無料で視力やメガネのチェックができます。お子さんは大人に比べ、メガネの扱いが丁寧でないことが多く、メガネの型くずれが見えにくさにつながるケースも多くあります。

“見えやすい状態”をつくるためにも、視力のチェックや、メガネの調整を定期的に行うのがおすすめです。

近視だけでなく、近くのものの見えにくさや、疲れ目の理由、ずれて見えるなどの相談も承っているので、お気軽にアイガンに足を運んでくださいね。